Fleischer Studios:Minnie the Moocher

2016.04.28

Talkartoons No.34 「ベティの家出」
公開:1932年(昭和7年)

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タイトル。Minnie the Moocherのイントロが流れる中タイトルとスタッフクレジットが映され、続いてキャブ・キャロウェイと彼の楽団の演奏の実写、そしてそこにRECORDED BY CAB CALLOWAY AND HIS ORCHESTRAのクレジット。
そしてフェードチェンジしてFEATURING BETTY BOOP AND BIMBOの文字。
のっけからセンス全開!

1920〜30年にかけて、ディズニー最大のライバルといえば、フライシャー兄弟によるフライシャースタジオです。
フライシャーの作品はナンセンス、シュール、都会的。ディズニーの作風とは対極にあるといってもいいでしょう。
緻密なストーリー展開よりもギャグの勢いで押し切る作品も多く、これはセンスがなければただの訳が分からない作品になってしまうところ、フライシャー兄弟は一度見たら忘れられないような不思議な中毒性を生むことに成功しています。
この世界観にハマってしまったら、ディズニー作品を物足りなく感じるようになる人は多いでしょう。

フライシャー兄弟について書かれた、素晴らしいウェブサイトがありますので、ご紹介します。
「懐かしの漫画映画館」
このサイトを作られている尾形恭さんは、プロのアニメ制作者の視点から、黄金期のアニメーター達や作品の背景、そしてアニメーションの技術的なことまで、その情報をわかりやすく我々に提供してくださっています。

1. フライシャー兄弟の概要、生い立ち、インク壺の外へ、ロトスコープ、ソング・カーチューン
2. スクリーン・ソングズ、トーカートゥーンズ、ベティ・ブープ&ビンボ
3. グリム・ナトウィック、 ベティ・ブープ、キャブ・キャロウェイ登場
4. ベティ・ブープ・シリーズ誕生、ベティ・ブープを探して、「ベティの白雪姫」への道
5. カラー・クラシック・シリーズ、シネカラー・プロセス、ベティのシンデレラ、セット・バック撮影
6. カラー・クラシックのライバル、カラー・クラシックの世界
7. フロリダ・スタジオ、初長編「ガリバー旅行記」

(まだまだ続くようですので、楽しみです)

このサイトにも詳しく書いてありますが、フライシャー兄弟が生みだした最も有名なキャラクターは、なんといってもベティ・ブープでしょう。
ベティはTALKARTOONS(トーカートゥーンズ)というシリーズの中で生まれ、もともとはビンボという犬のキャラクターの恋人のプードル犬でした。ベティのチャームポイント、大きなイヤリングは、プードル時代の耳の名残なのです。コケティッシュな魅力で人々を魅了したベティは、主役だったビンボを押しのけスターに躍り出ます。
トーカートゥーンズシリーズの34作目であるこのベティの家出(Minnie the Moocher)は、ジャズシンガーのキャブ・キャロウェイの同名の歌、そして彼自身(と楽団)の出演、そしてキャブの実写の動きをトレースしアニメーションにした(これはロトスコープというフライシャーの発明で今日も映像現場で使われている技術です)セイウチのキャラクターのリアルな動き、すべてが魅力的な世界をつくりあげています。

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両親からご飯を食べないことを責められるベティ。父親は興奮するうちに蓄音機になってしまいます。

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食卓の花が「さあベティ」と勧めてきますが、ベティは泣きながら断ります。花は「嫌なのかい?」と自分で食べてみますが、花びらが全部散ってしまいました。そう、ご飯がまずいのです。

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蓄音機になって怒鳴りつづける父親にベティは「お願いよパパ」と部屋を出ていってしまいます。母親は蓄音機のテープを別のものに変えます。怒鳴り声の代わりに愉快な音楽が流れだしました。

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階段の下で泣くベティ。裸婦の彫像がスカートを履き、ベティをなぐさめます。「どうしたのよ」

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ベティは歌います。”They Always Pick on Me”(彼らはいつも私に小言を言うの)
ハンカチについたベティの口紅も一緒に歌います。ベティは部屋で歯ブラシをタオルに包み、机に向かいました。

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ベティがインクから引き出したペンの先に、道化師ココ(フライシャー兄弟の最初のキャラクター)がついてくる。

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Dear Ma & Pa(ママとパパへ)
I’m leaving Home because you’re not so Sweet to me. I won’t be Home again.
(私はママとパパが優しくしてくれないから、家を出ます。もう二度と戻りません)
ベッドに手紙を置き、電話をかけるベティ。相手は恋人のビンボです。
「ビンボ!私家を出るわ!」
「本当?僕も君と一緒に行くよ。窓からおいでよ」

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ビンボは窓のシェードにつかまって、飛び降ります。
外では、恋人がベティを待っていました。

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手を取り合って、歩き出す二人。
このときビンボが嬉しそうにニッコリ笑うのが可愛い。

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ところが、だんだんと道が暗く、おどろおどろしい雰囲気になっていきます。
なにやら怪しい影が二人にまとわりつき…

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二人は影から逃げるように、洞窟に隠れます。
「私怖くなんかないわ…ビンボ、あなたは?」
「僕だって…」
しっかり手を握り、おそるおそる入っていくベティとビンボ。

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洞窟の中で、二人の前に煙がたちのぼり、妖しい生き物が…

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それはセイウチのお化けでした。セイウチは歌いだします。”Minnie the Moocher”
彼の動きは、冒頭のキャブ・キャロウェイとまるで同じ。これは躍るキャブの実写映像をトレースしているからです。(ロトスコープ)
デフォルメされたアニメーションのキャラクターたちの中で、セイウチだけが本物の人間のようなリアルな動きをし、なんとも言えない奇妙な世界をつくることに成功しています。

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ベティとビンボが、セイウチから逃れるように別の部屋へいくと、そこではセイウチの歌声にレスポンスをしながら、3人のガイコツがビールをゴクゴク。するとガイコツたちは崩れ落ち、中から出てきた魂たちが続けてレスポンス。

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恐ろしくなったビンボは井戸の中を覗くと、水に映った3匹のビンボが、セイウチの歌声に応える。
「ハイデホー」

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牢屋に入れられていたお化けたちは、看守から牢屋の扉を開けてもらい、陽気に外へ。

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看守に促され、電気椅子に座り、電気をかけられる3人のお化け。

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猫のお化けもスキャット。子猫のお化けも負けじとうたいます。
奇妙なセイウチの歌声、そして彼と一緒に歌うお化けたち。ベティとビンボはすっかり震え上がります。

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ガイコツや妖怪、老婆の幽霊まで、暗い洞窟の中で”Minnie the Moocher”の合唱はどんどん盛り上がって最高潮に。

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ほうほうのていで洞窟から逃げ出すベティとビンボ。お化けたちはもちろん二人を追いかけてきます。

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角の妖怪、ガイコツ、老婆、セイウチが、空いっぱいに広がります。
走るベティとビンボのまわりを、お化けたちが追いかけ回し、月もグルグル回り、メチャクチャです。

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家出したはずのホームに駆け込むベティ、ビンボも犬小屋のワンちゃんを追い出してブルブル…

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ベティはベッドに潜り込みます。
あっ、家出するときに置いてきた手紙が…

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手紙がビリビリと破れていくと、そこには”Home Sweet Home”の文字が。
やっぱりお家が一番ですよね。

フライシャースタジオの作品は、著作権切れのものをyoutubeなどでたくさん見ることができますので、ぜひ見てみてください。
このサイトでも、これからたくさん取り上げていきたいと思っています。

最後に、キャブ・キャロウェイが1980年の時に出演した映画「The Blues Brothers(ブルースブラザーズ)」で披露するMinnie the Moocherを。73才のキャブは、50年前のベティの作品と同じダンスを披露してくれます。
観客との掛け合いも最高!素晴らしい!

カテゴリ:Cartoon