大濠公園

2016.03.09

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その別荘からの眺望は悪くなかった。眼下に大きな落葉松林が続いていて、その迥か遠くには雪を頂くアルプスの連峰が見えた。別荘の庭のデック・チェアに坐って遠くの山を見ていると、ときおり、郭公の鳴く声が聞えて来たりした。そして郭公の声を運んで来る風は心地良く肌に触れ、人を追憶に誘うかのように思われる。
—何年目かしら?
ニシ・アズマはデック・チェアに坐って考えた。彼女は淡い水色のブラウスに同じ色のショオツを穿いて、いとも涼しそうな格好をしていた。何年目かしら? 彼女が前にこの別荘にやって来たのは、まだ学生の頃である。もう四年ほど経っていた。その頃彼女は詩を読むのが好きで、遠い山に向って詩集の頁を翻したりした。いま、デック・チェアに凭れて、遠い連峰を見ていると、その頃読んだ詩の一節が甦って来たりした。


今日、つくづくと眺むれば
悲しみの色口にあり。
…………

十二号 「黒いハンカチ」より  小沼丹

住宅地の高台に建つA女学院の教師、ニシ・アズマ女史が、身の回りに起こる事件を飄々と解決する、連作探偵小説です。1957年(昭和三十二年)に雑誌『新婦人』に「ある女教師の探偵記録」という副題で連載され、1958年に三笠書房から「黒いハンカチ」として出版されました。
著者は、小沼丹。

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「黒いハンカチ」連載雑誌 新婦人(1957年8月号)

私が小沼丹のことを知ったのは、2002年に新潮文庫から出た、北村薫氏編集の「謎のギャラリー-謎の部屋-」に「指輪」と「黒いハンカチ」の二編が収録されたことがきっかけでした。それからほどなくして、この創元推理文庫が出版されたと記憶しています。私同様、この本でその存在を知った人も多く、再注目されたのだと思います。
(余談ですが、この「謎の部屋」は、他にも物凄く面白い作品がずらり。ぜひ読んでみてください)

小沼丹の文章は、淡々としていながら洗練された、さながら甘くないお菓子のような味わい。
ゴテゴテしたクリームの甘さとは無縁の、一粒のビターなチョコレート、もしくはカリッとした焼き菓子……。
本人は、それさえも甘すぎるように感じたのか、後年になると、作品はよりさっぱりとした私小説や随筆へと移行していきます。

私は初期の甘さをのこす小説が大好きです。
「黒いハンカチ」をはじめ、さわやかな長編青春小説「風光る丘」や、芥川賞候補の「白孔雀のゐるホテル」、江戸川乱歩編集の雑誌「宝石」に書いた短編のミステリ……。
中間小説から純文学までいろいろですが、品のある筆致は変わりません。

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宝石(1960年1月号) 「みちざね東京に行く」を収録。

「黒いハンカチ」は、東京創元社のwebサイトで、冒頭を立ち読みすることができます。
こちら

他の著書でいま買いやすいのは、講談社文芸文庫から発売している初期の短編小説や後年の私小説など。
こちら


DRINK

2016.02.03

冬でも、たまに冷たいものが飲みたくなります。

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DRINK

2015.09.09

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お盆の迎火

2015.08.13

庭で焚きました。
炎を眺めるのは大好きで、ずっと見ていられます。

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あっという間に燃え尽きてしまいました。
去年はもっと長く燃えていた気がするんだけどなぁ。